『やしょうま』は二月十五日または三月十五日のお釈迦様の亡くなった日(入寂した日)=涅槃会(ねはんえ)に食べる細長い上新粉餅の名前です。呼び方、作り方や形、材料は各地で様々ですが、長野県のほほ全域でみらるようです。 一般的にやしょうまは、かつて、家やお寺で作ったものを、子供たちが主になってもらい歩いたもの。これを「やしょうまを引く」などと呼んでました。
特にお寺の場合、2〜3日前から檀家から米を集め、前夜粉にしてやしょうま≠造ります。当日、これを参詣人や子供たちに配り、または涅槃会の法要の時にまくようです。家庭では仏壇に供えたり、近所隣同志で分かち合ったり、できばえを自慢したり、批評し合ったりする習慣があったようです。
■各地の呼び方
長野県内では主に「やしょうま」「やせうま」が一般的で、通称「やしょんま」「やしょ」と呼んでいます。但し、各地でその名称は異なり様々です。
例えば、オミミ・オミミダンゴ(木曽郡樽川村)、ミミダンゴ(下水内・下高井方面)、お釈迦の日ダンゴ(北安曇郡小谷)、その他ハナダンゴ・ハナクソ・ハナクサモチとも呼ばれ、全国的にはヤセウマという呼び方があるようです。
■名前の由来
大きく分けてどうも三通りの話が伝えられているようです。
(1)「やしょ、うまかったぞよ」
お釈迦さまが亡くなる直前、ヤショという弟子が米の粉で作っただんごを進ぜたところ、おいしそうに召し上がった。そして「ヤショ、ウマかったぞよ」といって息を引き取ったという。そこからこのだんごをやしょうまと呼び、命日の涅槃会に作って仏様に供えるようになったという話です。
(2)「やすだら姫」
奥様であるやすだら姫がお造りになり、お釈迦様に食べさせたという話。この「やすだら」が語源。
(3)馬に似た形状から由来
箸などを押し付けて中央がふくらむようにしたその形が痩馬(やせうま)の骨張った背中、馬の耳、馬の鼻、馬の足などに形が似ているところから来ているという話。やしょうまを持っていると年中病気にかからないとか、馬のクラの中に入れておくと馬がケガをしないなどの信仰がかつてあり、馬との結びつきは強いようです。
■製法
各家庭で簡単に作る場合は、米粉(上新粉)を水または湯で練って蒸し、それをちぎってごま、海苔、豆やシソ、蓬、食ベニなどを混ぜて成形し、もう一度ふかして仕上げるのが一般的のようです。成形方法は様々ですが、細長い棒状(直径5〜6センチ、長さ20〜25センチの円筒形)にし、箸や細い麺棒を二本押しつけて中央が少しふくらむ(凸状)ようにするのが主流です。 その他、三個所出っ張りのある三角形に似たもの、真ん中のくびれた分銅形のもの、花弁の形のもの、簾で巻いたもの、円形のもの等があります。また、食紅で生地を様々な色に染め上げ、花や色々な模様を中に巻き上げ、金太郎飴のようにどこを切っても同じデザインが現れるように仕上げたものもみられます。
■食べ方
薄く切って食べるます。冷えたものは焼いて食したり、焼いたものをタマリ醤油に付けたりして楽しみます。揚げたりする場合もあります。(*写真は当店のオリジナル特製やしょうまです。)
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